こぶれ 2025年12月号
9/20

これらすべての作業を田中さん夫婦2人でこなしています。インゲンは手で簡単に収穫できますが、成長が早いため毎日の収穫が欠かせません。「手前のは見て見ぬふりしないと(笑)手前ばかり取っていたら奥まで行きださん」と話します。選果・選別はさらに時間がかかります。サイズごとの印をつけた自作の箱を使って仕分けていきます。露地栽培が多いインゲンですが、ハウス栽培のメリットは実が大きく育つことです。2Lサイズでもやわらかく、食味はS・Mサイズと比べてもそん色ありません。栽培する上で大切にしているのは水管理です。地面のかん水チューブから水と液肥を与えます。「調節は実を見て決める。勘ですね」と田中さん。言葉では説明しきれないような変化を読み取るその作業は、長年の経験があってこそできる技術です。もう1つ、その技術の高さを感じたのが、苗からの栽培管理です。9月に植え付けてからは、縦に張ったネットに沿って上へとツルを伸ばしていきます。ネットは斜めの格子状になっていて、そこをジグザグにはわせていくのですが、田中さんの場合は2本を交互にクロスさせてより効率的に面積を利用できるよう工夫しています。すべての苗が同じようにネット上で進んでいくよう、1本ずつ巻き付ける作業を毎日繰り返します。換気をしているとはいえ、真夏のハウス内での作業は相当な根気が必要です。そして、花が咲くと「いよいよ」という気持ちが高まるそうです。「花ん出てきたど~」とうれしさがこみ上げてくると同時に、これからの収穫が楽しみになってくると話します。今後の目標について聞くと、「現状維持。続けられる限りはやっていきたい」と田中さん。とは言っても、ただ続けるだけではありません。今年から新たに、通路の上までもう一段伸ばすことでより収量を上げられないか挑戦しています。「どがんなっとかなぁ、といろいろやってみるのが楽しみ。何か楽しみがないと」笑顔で楽しそうに話す田中さんの姿からは、農業そのものを楽しむ前向きさが伝わってきます。田中さんの手で育てられたインゲンは、今日もハウスいっぱいに青々と広がっています。▲ネットに沿って2本のツルがきれいに交差しています▲自作の道具でサイズを測る様子      9

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る